飲食店の接客力は従業員満足(ES)の向上で飛躍的にUP

飲食店の接客マニュアルの重要性を説く資料や記事を多く見かけますが、それで商売が圧倒的に繁盛できるのでしょうか。

答えは、『はい、飲食店に接客マニュアルは必要です』、『但し、それだけでは接客レベルは上がりません』、です。

実は接客レベルが高い飲食店は、前提としてお店に対しての従業員エンゲージメントが高い傾向にあります。

従業員エンゲージメントとは、飲食店と個人との親密度や絆の強固さを言い、相互理解からチームが成り立っている関係性を表します。

従業員の立場から見れば、従来の上下関係からくるロイヤリティ(忠義・忠誠心)とは異なり、フラットな関係で飲食店と結ばれている状態です。

そのため飲食店に対して愛情や愛着をより強く感じられるため、最大限のパフォーマンス(接客含む)を発揮できるようになります。

今回は、このエンゲージメントをベースとした従業員満足(ES)の向上を通じて、飲食店の接客レベルを上げる流れについて解説していきます。

飲食店で接客力が大きくブレる理由

飲食店へ訪れたときに、期待していた接客サービスを受けられず、がっかりした経験はないでしょうか。

これは同じブランドにも関わらず、各々の飲食店により従業員エンゲージメントに差があるため起きてしまう問題の一つです。

例えば、ファーストフードような飲食店の接客を例にとると、注文後、本来5分以内で提供される料理に20分間待たされた上、スタッフに忙しいから仕方が無いという態度で商品をぶっきらぼうに渡されたら、あなたはどう感じますか?

飲食店で受けた最悪の接客経験により食べる前から気分が悪く、味などはどうでも良くなると思います。

飲食店の接客マニュアルだけでは
問題は解決しない

飲食店チェーンであれば、接客7大用語を含む、接客マニュアルやハウスルールなども、もちろん用意しているでしょう。

では、なぜが接客によるクレームが起こるのでしょうか。

それは、顧客満足(CS)以上に、従業員エンゲージメントを意識した従業員満足(ES)が大切だという観点がこの飲食店のマネジメントや接客に抜けているからです。

仮に、従業員エンゲージメントの向上を意識し、従業員満足(ES)を高めている飲食店であれば、『お店のために頑張ろう!』、『サービスを良くしよう !』となるため、少なくとも接客におけるこのような問題は発生しないと言えます。

常日頃からこの従業員は、この飲食店に対して不満を抱いていたはずです。

なんで今日はこんなに忙しいんだよ

当欠で人が不足してるから接客できなくても仕方ない

今日は適当にながして仕事をしよう

そんなネガティブな感情で飲食店の従業員が接客業務に臨めば、態度や表情を通じてお客様へ伝わり、上記のような問題へと発展してしまうのです。

もちろん店長や社員から、『今日はAさんが病気になり、スタッフが不足してるけど、皆でサポートし合いながらピークを乗り切ろう!』という一言があれば、飲食店の接客は多少改善されていたかもしれません。

但し、従業員満足(ES)が低い状態で、店長がその指示を出したとしても接客態度は変わらなかったはずです。

飲食店の従業員満足(ES)を
高める4つのポイント

ESとは、Employee Satisfactionの略語です。

この従業員満足(ES)を高めるには、従業員エンゲージメントをどう上げるべきか考えると答えが見えてきます。

飲食店経営において、この従業員満足(ES)と従業員エンゲージメントを高めるポイントが下記の4点だと考えます。

従業員満足(ES)を高めるポイント4つ

  • ポイント①:飲食店の目標やビジョンへの共感
  • ポイント②:仲間への帰属意識が持てること
  • ポイント③:従業員の成長を促す教育計画があること
  • ポイント④:裁量のある働き方ができること

ポイント①:飲食店のビジョンや経営方針への共感

飲食店の目指すべき姿、目標やビジョンなど、従業員から共感を得られるものが存在していることです。

もしも無ければ飲食店を開業した理由を思い出し整理してみましょう。

『笑顔あふれる地域に根づく店づくり』

『100年飲食店を目指し地域貢献を実現』

『疲れを癒せる元気な接客をしよう』

『お客様が安心できる憩いの場を作ろう』

『従業員が主役のエンターテイメントの場を作ろう』

『地域コミュニティのハブになるお店を作る』

飲食店の存在理由を明確にし、常に伝え続けます。

これは常に発信し続けなければ伝わりません。

ことあるごとに、ある時は書面やメールなどの文章を通じて、ある時はミーティングや会議などで言葉を通じて飲食店の従業員へ伝えていきましょう。

ポイント②:仲間への帰属意識が持てること

飲食店に入店した当時のイメージと比べて現実にギャップはないか、コミュニケーションの取りづらさを感じていないか、キッチンスタッフとホールスタッフの関係など、人間関係が殺伐としていないか、モチベーションの低下などが無いかを確認しましょう。

そして、飲食店の他従業員とのコミュニケーションは取れているのか、一人で浮いていないか、楽しく働けているか、基本的な労働条件は満たされているか、などを確認しましょう。

仮に、問題があれば一緒に解決をしていく必要があります。

一人でなんとかしろではなく、一緒に解決していこうという気持ちを示し、実際に解決してあげることで飲食店への帰属意識はさらに高まります。

ポイント③:従業員の成長を促す教育計画があること

飲食店の従業員のマインド教育から実務教育まで、成長を促すための教育計画の存在は非常に重要です。

飲食店に成長目標に応じた従業員教育の仕組みがあれば、次の目標も見えやすくなりモチベーションの維持がしやすくなります。

さらに定例ミーティングを通じて、成長度を評価・フィードバックしていきましょう。目標が達成できたことも褒めるだけでなく、なぜ達成できたのかを分析させましょう。その分析から導き出された達成のロジックが次の目標達成に役立ちます。

逆に目標を達成できなけば、出来なかった理由を掘り下げ、再度チャレンジできる環境を整えてあげましょう。

飲食店の従業員に期待を掛けることでさらにやる気を出すようになります。

ポイント④:裁量のある働き方ができること

裁量のある働き方とは、飲食店経営において、権限と責務(果たすべき義務)と責任が同じ割合で店長へ与えられている状態を言います。

シンプルに言い換えれば、飲食店での権限を君に委譲していくから店長としての責任と義務を果たしてくださいよ、という考え方です。

本来はこの3つの要素が下記のように正三角形を形成しているべきです。

逆に下記の図の場合、店長の責務(果たすべき義務)と責任が重く、それに見合う権限を与えられていない状態です。

一度、任せたのであれば、ある程度の裁量を与え、飲食店の店長のやる気を促すべきです。そして、この裁量の幅があればあるほど、従業員エンゲージメントは高くなります。

最低でも、上記4点を確認しながら、離職の可能性を下げていく努力をしましょう。

そうすれば、相手は自分のことを理解しようと努力してくれていると感じ、従業員満足(ES)は高まります。

もちろん、それを仕組みにしていくことも大事ですが、飲食店の場合は、仕組み以上に血の通う組織であることが大切だと感じます。

表面的な内容では、飲食店で働くメンバーの成長を促すことはできません。

お互いが同じベクトルで目標達成を目指すことがチームの絆を深め、従業員エンゲージメントを高める近道だと考えます。

ここまで出来れば、飲食店における7割の問題は解決します。

さらにチーム力が高ければ戦略や戦術の良し悪しに関わらず、ポジティブな結果を残すことが出来るようになります。

店長教育に関しての記事はこちら

期待と仕組みで店長を育てる【飲食店の教育ノウハウ】

店長教育の考え方やノウハウについて解説します。飲食店経営において、店長のレベル次第で売上は±20%上下します。能力の高い店長…

 

定例ミーティングを通じて
従業員満足(ES)を高める

こちらでは、飲食店の教育の一環である従業員との定例ミーティングについて少し詳しく解説していきたいと思います。

飲食店の定例ミーティングの目的は大きく分けると2点あります。

  • 目的①:パート・アルバイトの成長度をフィードバックしていくこと
  • 目的②:パート・アルバイトとのコミュニケーションをアップ

目的①:パート・アルバイトの成長度をフィードバックしていくこと

パート・アルバイトと定例ミーティングを実施し、成長度をお互いに確認していきましょう。

この時にアルバイトの自己評価店長の上長評価を交えながら面談を進めます。相互評価を取り入れる理由は2点あります。

理由1:店長は自己評価を通じて見えていないアルバイトの成長を確認

理由2:アルバイトは上長評価で店長が求めているタスクを理解

自己評価は、自分自身が成長していると主観的に感じている部分です。

しかしながら、店長としてそこを気づけない可能性もあります。

アルバイトからすれば、『僕のここは成長しているのに評価してもらえない…』とやる気を削いでしまうかもしれません。

そして、店長として成長してほしいと考えている箇所をアルバイトへ伝える場でもあります。

仮に、前回の目標を達成していれば次の目標を新たに設定します。

大切なことは、単に目標達成に対しての評価だけではなく、達成までの過程を分析させ、ルール化させるよう促します。

理由は、そのルールと照らし合わせて行動できるようになれば、成長のスピードやモノの見方に多様性が生まれるからです。

そして、仮に目標をクリアできていない場合でも、叱るのではなく、どうすれば出来るようになるのかを考えさせるのです。

目的②:パート・アルバイトとのコミュニケーションをアップ

そして、この定例ミーティングの目的は、従業員満足(ES)を高める狙いもあります。

その場合、カウンセリングに近い考え方ですが、傾聴、共感、需要にて会話を進めていきます。

ちなみに、アメリカの心理療法研究の創設者の一人であるカール・ロジャーズ氏の心理療法で有名なPerson-centered therapy(パーソン・センタード・セラピー)をベースに会話を進めることをおすすめします。

  • 自己一致
    フラットな感情で面談に臨み、素直な気持ちや態度で相手の話を真摯に理解しようと臨む姿勢が大切です。
  • 共感的理解
    あなたを理解していますよ、という姿勢で面談に臨むこと意味します
  • 無条件の肯定的配慮
    善悪や好き嫌いなどの評価は一切せず、常に肯定的な関心のもと話しを聞きます。

パート・アルバイトの抱える悩み

店舗の中で孤立していないか

何か不安に思うことはないか

不満に思うことはないか

分からないことで悩んでいないか

プライベートで問題を抱えていないか

大学や高校の授業に遅れはないか

飲食店のことのみでなく、家庭やプライベートのことまで、パート・アルバイトが抱える悩みに深い理解を示すことでお店への帰属意識が高まります。

注意しなければならないのは、絶対に他言しないことです。他言した時点で従業員エンゲージメントは地の底まで落ちるとご理解ください。

従業員満足(ES)の低さがお店におよぼす悪い影響

ところで、従業員満足が低い場合、どれほど経営に影響を及ぼすのでしょうか。

ある統計では、入社して3年以内の離職が800万円以上の損失に繋がるとのデータもあります。特にチームの中で活躍をしている従業員が退職をすれば、その損失はさらに上がります。

顧客の店離れ

他の従業員の連鎖的な退職

飲食店全体の士気の低下

レシピなど機密情報流出の可能性

など、ネガティブな機運が高まります。
そのため、従業員満足(ES)のアップが必要なのです。

飲食店の従業員満足(ES)を
意識したハウスルールとは

飲食店の従業員同士の業務を円滑にしチームワークを向上させることが大切です。

このチームワークの醸成には、チーム内の人間関係をより良くし、気持ち良く仕事が出来る環境を整備しなければなりません。

そこでハウスルールを用いて環境を整備します。

このハウスルールは、飲食店内の規律を守り、従業員同士の人間関係を良好に保つ役目を果たします。

ハウスルール

従業員同士が気持ちよく働ける環境づくりを目的としたルールのこと


  • 従業員同士のあいさつ
  • 出退勤時のルール
  • 休憩時の注意点
  • 長時間勤務時の休憩時間
  • アピアランスルール
  • 貴重品管理について
  • まかないについて
  • 友人や従業員来店時のルール
  • 朝礼ノートの記載ルール
  • トイレに行く時のルール
  • 更衣室の使用方法について
  • 電話のルール

このハウスルールに詳細を付け加え、新人さんが入店した際に内容を読み合わせながら共有します。
読み合わせる時間が無ければ、資料を配布し覚えてもらいます。

飲食店の接客の基本とは

接客の基本とは何を指すのでしょうか。

それが接客マニュアルです。

この接客マニュアルを活用し、入店したばかりの新人さんに理想の店舗像を教育していきます。

最低限用意すべき接客マニュアルは以下の通りです。

接客マニュアル

お客様満足度の高い接客のための基本ルールを記したもの


  • お客様のお出迎え
  • テーブルまでご案内
  • オーダーテイク
  • ドリンク提供
  • フード提供
  • 中間バッシング
  • 追加オーダー
  • お会計
  • お客様のお見送り

これはお客様の入店から退店までの一連の流れを記したものですが、この接客の流れに合わせて細かなルールを決めていきます。

マニュアル化のポイントは、各項目ごとに、動作と文言、注意すべき点、そして発生し得る問題点など、今までの飲食店運営で培われたノウハウや体験談を盛り込み、より細かなものを作成します

このマニュアルを読み込めば入店したばかりの新人さんでも、営業の流れを理解できるように作り込むことが理想です。

ベトナム出店時におけるマニュアル作りの経験談

ちなみに余談ですが、外食チェーンで初のベトナム進出をした際に、言葉が通じない従業員をマネジメントしたことがあります。

当時は日本語はもちろん、英語すら通じない状況で、このマニュアル作りがオペレーションの生命線でした。

日本語は、ニュアンスや抽象的な表現が多い言語のため、作業を出来る限り細かく言語化。ホール作業のみならず、調理作業、計数管理やPOS業務など、全ての現地化に費やすこと数週間…

企業理念、経営方針、オリエンテーションブックなども現地化した上で、研修に臨み、無事開業した経験があります(汗)

 

まとめ
~飲食店の従業員満足(ES)を通じ接客レベルを高める方法~

今回は、この従業員エンゲージメントをベースとした従業員満足(ES)の向上を通じて、飲食店の接客レベルをアップしていく流れについて解説してきました。

飲食店は生き物であり、お店の運営側の考え方や目的次第で、圧倒的に良くもなれば、悪くもなります。

本当にお店の接客レベルを上げ、集客力を高めたいとお考えであれば、ぜひ従業員満足(ES)アップの努力をしてみてください。

確実にチームの雰囲気が変わり、飲食店が輝き出すことを実感できるはずです。

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