飲食店のアルバイト育成に役立つ生理心理学の理論にヤーキーズ・ドットソンの法則があります。
ヤーキーズ・ドットソンの法則とは、心理学者のロバート・ヤーキーズとJ.D.ドットソンがネズミを用いた実験で発見した『適度なストレスが物事のパフォーマンスに好影響を与える』という理論です。
仮にこのストレスの度合いが高すぎるとパフォーマンスは低下しますし、低すぎてもパフォーマンスは低下します。
大切なのは適度なストレスを与え、パフォーマンスのレベルをピークに到達させることだと言っています。
今回はこのヤーキーズ・ドットソンの法則を活用したアルバイトの育成について解説していきたいと思います。
ヤーキーズ・ドットソンの法則とは
1908年、ヤーキーズとドットソンがマウスで実験した際に、微量の電気ショックを活用し、マウスに物事をより早く学ぶよう仕向けることに成功しました。
さらに、ショックの電流が強くなるにつれ、マウスが物事を学ぶことよりも電流の回避に注力しはじめ、学習能力の低下を招くことも分かったと言います。
つまりストレスが一定のラインへと高まれば、モチベーションが高まり、課題解決に向けて行動が習慣化され、パフォーマンスが向上していくと提唱しています。
しかしながら、ストレスを上限以上与えてしまうと、緊張やプレッシャーが強くなり過ぎてしまい、逃避、不安や不満を招き、パフォーマンスが低下してしまうと言います。
そのため対象者に対して、適度なレベルのストレスを与えることで彼らの心拍数が高め、ほど良い興奮状態にしていくことがパフォーマンスを高めるために求められるのです。
ストレスのレベルは人それぞれ異なる
4つの影響力のある要因
ちなみに、ストレスレベルは十人十色、百人百様だということです。
人それぞれ異なる経験を積み、異なる環境の中で生活をしています。自分にとってのストレスレベルと他人のストレスレベルに違いがあることを理解しなければなりません。
その要因に挙げられるのが、知識や能力レベル、性格、自信、課題の複雑さ、の4点です。
知識や能力レベル
与えられた課題が過去に学んだことに近い場合、ストレスレベルが高くても乗り越えることが可能でしょう。例えば、ターゲットとなる課題が今ある知識の延長線上にあれば、高負荷の中でもストレスを適切に管理できる可能性が高いはずです。
個々人の性格
人の性格もストレスレベルに影響を与えると言われます。内向的な人よりも外向的な人の方がストレス耐性が高いため、プレッシャーの中で高パフォーマンスを発揮できると信じられています。
自己肯定
与えられた課題に対して自信の有無が大きく左右します。自分に対して自信があれば適度なストレスやプレッシャーを乗り越え、高いパフォーマンスを発揮しようと感じます。逆に、自信がなく、自己否定しがちな場合において、ストレスが逆効果になる可能性が高いと言えます。
課題の複雑さ
簡単な課題であれば、適度なストレス下において高いパフォーマンスを発揮します。しかしながら、馴染みのない複雑な課題に臨む場合、プレッシャーが逆効果になり、集中力を削ぎ良いパフォーマンスを上げることが出来ません。
飲食店の現場で
ヤーキーズ・ドットソンの法則を活用
ここまでヤーキーズ・ドットソンの法則を解説しましたが、飲食店の現場で具体的に活用してみましょう。
アルバイトの教育活用術
飲食店のアルバイト育成において、ヤーキーズ・ドットソンの法則を用いることが出来ます。
具体的には、以下の5つの手順でアルバイトの育成に活かします。
- ①個々の能力や個性をしっかりと把握
- ②教育カリキュラムを共有
- ③『少し頑張れば手の届く課題』を提供
- ④達成度を評価できる仕組みを構築
- ⑤新た案課題を与え、常に緊張感のある状態を保つ
①個々の能力や個性をしっかりと把握
前述した4つの影響力をベースに個人特性の把握に努めます。
- 接客経験の有無は?
- 趣味や交友関係は?
- アルバイトをしたことがあるか?
- 目を合わせて話ができるか?
- 外向的あるいは内向的か?
- 自己肯定感が高いのかそうでないのか?
- 少し難しい質問に答えられるか?
これらをベースに各アルバイトの教育におけるスタートラインと決定します。
②各人に教育カリキュラムを共有
まずアルバイトにお店が目指す方向性を伝え、店風に対して共感を得ることから始めます。
次に、具体的なホールとキッチンの教育の流れを一通り共有していきましょう。
その中で、自信があることと自信が無いことを顕在化(見える下)し、どこから教育すべきかを決めていきます。
併せて、昨今、労働人口が減少傾向にあるため、一人二役三役を目指してもらうことは当たり前の時代になりました。ホールとキッチンを両方こなせる人材に育てることを最終目標に各個人に合った教育カリキュラムを作成しておきましょう。
③『少し頑張れば手の届く課題』を提供
当然ですが、人それぞれスタートラインが異なります。
入店したアルバイトを短期間で戦力化していくためには、各人の経験値を踏まえた目標設定が重要になります。
以前、接客業に従事していたアルバイトに対して、対人に慣れてもらう必要は無いはずです。
料理の配膳や場合によっては、数十分の練習後にオーダーテイクからスタートしても良いと思います。
逆に、全くの未経験者の場合、発声に慣れることから始める必要があるかもしれません。声を出す恥ずかしさを無くすためにお客様の方を向き、あいさつが出来るようになるところから始めます。
④達成度を評価できる仕組みを構築
先ほどの季節商品のおすすめに目標数を設定し、達成できた場合に一品当たり数十円のインセンティブを付与するなど、目に見える形で大きすぎない報酬を与えることも緊張感を持続させる手法の一つです。
お店側としては、ロスになりそうな食材を売り切りたい場合もあります。そんな時はロスの低減にも一役買ってくれます。
⑤新たに課題を与え、常に緊張感のある状態を保つ
【①】にて確認をした経験値を踏まえ、一段階上の業務を覚えてもらうように教育していきます。
例えば、ホール業務から覚えてもらう場合、適度なストレスを与えることを目的に下記のような流れで教育をしていきます。
- 入店一日目は、テーブル番号に慣れてもらうために料理の配膳から始める。
- テーブル番号を覚えたら注文を取れるようになってもらう。
- オーダーテイクに問題が無ければ、注文時に季節商品のおすすめをしっかりと出来るようになってもらう。
- 季節商品のおすすめが出来るようになったら、当日の取得目標を決めて達成してもらう。
- 入り口(会計、ご案内)業務とホール業務の両方を同時に出来るようになってもらう。
そして、一通りホール業務が出来るようになれば、キッチン業務やマネジメントのサポート業務を教育していき、緊張を持続していきます。
さらに季節のおすすめ商品を定期的に投入したり、年に1から2回のメニュー改定をしながらお客様の満足度を高めると同時に、【新たなことを覚えなければならない】という適度なストレス下にアルバイトを置くことで高パフォーマンスを維持してもらうことに繋げます。
まとめ
~飲食店のアルバイト育成に活用【ヤーキーズ・ドットソンの法則】~
ヤーキーズ・ドットソンの法則を活用し、飲食店のアルバイト教育を効果的に行う考え方について解説してきました。
実は昔ながらの飲食店では今だに誰に対しても高ストレス下で教育をしているお店が少なくありません。
また教育内容は、教育の流れが画一的で、誰に対しても同様のカリキュラムで教育をしている店舗が多くあります。
逆に、採用が難しい状況下でアルバイトの離職を恐れ、極力ストレスを与えないように教育している店舗もあります。
しかしながら、より効果的にアルバイトの成長を促すためには個々人に合った教育カリキュラムを組み、適度なストレス環境下で教育計画を実行していくことが大切だと言えます。
ぜひアルバイトのパフォーマンスを高め、飲食店を活性化していくために活かしてくだされば幸いです。
今回は以上です。
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