今回は飲食店の健全度をはかる経営指標の一つである人時売上高について詳しく解説します。
飲食店の人時売上高とは、1時間の労働で、1人のスタッフがいくらの売上を稼ぎ出したかを示す経営指標です。
まず目標の人時売上高を4,500円から5,000円/時間に設定すべきかと考えます。
こちらではさらに具体的な例を交えながら人時売上高の活用方法を詳しく解説していきます。
飲食店の人時売上高を理解し生産性を向上
飲食店の集客力はあり、売上もそこそこあるが、利益が残せないとお悩みでしたら、人時売上高を数値目標の一つに追加してみてください。
人時売上高の計算方法などを踏まえ、生産性向上のポイントについて解説していきます。
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人時生産性と人時売上高との違い
この人時売上高は、人時生産性と混同されることがありますのでご注意ください。
簡単に解説しますと、この人時生産性は、1時間の労働で、1人のスタッフがいくら粗利を稼ぎだしたのかを示す経営指標です。
人時生産性の計算式は以下の通りです
人時生産性 = 粗利益 ÷ 総労働時間
人時売上高は飲食店の健全度をはかる指標のひとつ
簡単に言うと飲食店の売上は何時間の労働で作り上げたのかを示しているのが人時売上高です。
また人時売上高を総労働時間数でいくらの売上を上げられたのかを示す数値と言い換えることも出来ます。
つまり、飲食店の収益性や生産性の良し悪しを図るために、この人時売上高を用いるのです。
人時売上高の計算式は以下の通りです
人時売上高 = 売上高 ÷ 総労働時間
飲食店の人時売上高における大まかな2つの役割
飲食店経営において、人件費率を25から30%以内に収めることを提唱される記事は多くあります。しかしながら、アルバイトの時給や正社員の給与額により、同じ売上と労働時間でも人件費率は大きく変動します。そこで飲食店の健全度を示す指標としてこの人時売上高を用います。
人時売上高の2つの役割
役割①:飲食店の人件費の適正化のため
役割②:労働力の生産性を高め収益性の最大化を図るため
飲食店の人時売上高を具体例と共にご紹介
これだけでは人時売上高をイメージしずらいと思いますので、次に具体的な活用方法について2つのモデルケールをもとに説明します。
飲食店経営 2つのモデルケース
飲食店には様々なスタイルの業態が存在します。その中でも対照的な2つの業態モデルを比較しながら人時売上高を具体的にご紹介します。
まず、モデル①のパターンはレストランなど料理をメインに打ち出している飲食店に多いケースです。そしてモデル②のパターンは居酒屋などアルコールを提供している飲食店に多いケースです。
人時売上高モデル①:10時から22時まで休憩なしで営業している飲食店
まず営業時間が10時から22時までアイドルの時間帯を閉店せずに開業している飲食店をイメージしてください。
この場合、飲食店では開業前の仕込みなどの準備や閉店作業を踏まえると、恐らく9時から23時までは従業員が飲食店に勤務していることになります。
つまり飲食店の営業時間のみでなく、営業前の準備からラストオーダー後のかたずけや清掃業務を含め、当日の全従業員が退店しタイムカードを切るまでの全労働時間を基準に数字を算出します。ワークスケジュールは下記の通りです。
営業時間 11:00~22:00(11時間)
客単価 ランチ 980円/アイドル 680円/ディナー 2,900円
客席数 50席
席稼働 35席(※満席率70% 50席 x 70% = 35席)
売 上 272,320円
客 数 161名
労働時間 67時間
人時売上高 4,064円
ランチ営業している飲食店の場合、従業員の労働時間が長くなり、逆に一日を通した客単価は低くなる傾向にあるため人時売上高も低くなります。
人時売上高モデル②:17時から23時までディナーのみ営業している飲食店
次に、営業時間が17:00から23:00まで営業をしている飲食店のワークスケジュールを下記に掲載します。
営業時間 17:00~23:00(6時間)
客単価 ディナー 3,200円
客席数 50席
席稼働 35席(※満席率70% 50席 x 70% = 35席)
売 上 288,000円
客 数 90名
労働時間 60時間
人時売上高 4,800円
もちろん飲食店の状況により、上記の数値や人時売上高のバランスは大きく変化しますが、アルコール提供のイメージが強い居酒屋業態は品数が多く単価が高くなる傾向にあります。
今回はホールとキッチンを分けてワークスケジュールを組んでみましたが、ホールとキッチンの業務を両方こなせる従業員が飲食店にいれば、営業前と営業後の業務をさらに効率化できますので労働時間をさらに低減させることが可能となり人時売上高もアップします。
また一部の仕込み品をOEM化し、作業時間を短縮できればさらに人時売上高を高めることが出来ます。
当然のことながら上記のイメージを比較した場合、後者のディナー営業のみで運営をしている飲食店の方が人時売上高も高く高効率だと言えます。
もちろん人時売上高の数値のみを見ればその通りです。しかしながら、経営戦略上、同商圏内に多店舗展開をしていく場合、多業態戦略は不可欠です。そのため下記のような業態にて出店をします。
モデル業態①
カフェ業態:産直フルーツドルチェのイタリアンレストラン
モデル業態②
居酒屋業態:釜めしと串焼き専門居酒屋
人時売上高のみを見ればモデル業態②の方が良いかもしれません。しかしながら、人材採用や物件契約の面では、上記のカフェ業態の方が有利になることもあります。
そのため、どちらの業態を出店時に選ぶかは企業の出店戦略に依存するものであり一概にどちらが良いとは言えません。
飲食店の人時売上高の適正数値は
ここまで飲食店の人時売上高について簡単に説明をしてきました。
人時売上高の適正数値はあるのでしょうか。答えはYESです。
業態の特性や営業時間にもよりますが、人時売上高は、4,500円から5,000円が目指すべき数値と言えます。
個人経営の飲食店の人時売上高は3,000円程度が多く、高い飲食店でも4,000円程度だと思います。
まずは自店の実績を計算してみた上で、人時売上高の目標設定を4,500円から5,000円を超えるようにしてみてください。そこから営業時間内の無駄が見えてくるはずです。
さらに良くある間違いが、総労働時間の考え方です。
アルバイトや店長はもちろんのこと、オーナーの固定労働時間を含んだ全ての労働時間を対象に計算してください。それでなければ正しい人時売上高を算出したことにはなりません。
例えば、月間売上予算が200万円の場合、人時売上高を5,000円に設定した場合と、使用可能な月間の総労働時間は400時間となります。
飲食店の人時売上高の算出例
400時間(使用可能労働時間)
= 200万円(月間売上予算) ÷ 5,000円(目標人時売上高)
但し、あくまでも目標値のため、十分な売上が確保できず、今以上に労働時間を削減できないケースもあるのでご注意ください。
その場合は、売上アップの戦略を打ち出しながら、少し多めの労働時間でシフトを組むなど、売上と人件費のバランスを考慮しながらワークスケジュールを組み、人時売上高を調整していきましょう。
飲食店の人時売上高のまとめ
飲食店の収益性を適正化していくための指標のひとつ、それが人時売上高です。
単純に人時売上高の目標である5,000円を達成すれば良いというものではなく、定量的に計画を立てるための目安として活用してください。
今までは、なんとなくシフト組みをしたり、アルバイトの労働時間を埋め合わせるために、無駄にシフトインさせていたところを、必要労働時間や適正労働時間を把握した上で、人員コントロールの癖をつけていきましょう。
生業家業から飲食事業へと発展させるための第一歩としてこの人時売上高を取り入れてみてはどうでしょうか。
まずは人時売上高の算出から始めてみましょう。
従業員一人一人の能力を高め、労働時間を徐々に減らし、人時売上高を高めていこう!
一人当たりの作業量を増やし、チーム力を上げ、人時売上高を高めよう!
売上を伸ばすためにピークタイムの人員をあと5時間増やし、回転率を高め、当日の客数を10名増を狙おう!それが出来れば人時売上高を200円上げられるぞ。
将来的に上記のような会話が飲食店の中で出来るようになれば、チームが強くなり、飲食店の収益性がさらに高まることは間違いありません。
人時売上高とは、飲食店の経営をしていく上で、目安とすべき数値のひとつですし、使い方ひとつでチームの士気を高めるためのツールにできます。
ぜひご自身の飲食店にあった基準を設け、儲かる仕組みを構築し、さらに従業員の士気を高めるために導入してみてくださればと思います。
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