昨今、『和牛』や『WAGYU』として日本発の牛肉が海外の飲食店でも扱われるようになりました。そして、和牛肉の牛脂のキメ細やかでとろけるような食感が海外セレブにも高い評価を受けています。
そんな和牛に関する歴史や格付けの基準など、友人や知人とお肉を食べるときの会話のスパイスになるお話しをしていきます。
飲食店で馴染みの深い牛肉のロインにまつわるお話
ところで、そんな飲食店で提供されている牛肉の呼び名、実は少し古い歴史があります。
飲食店ではお馴染みの牛肉の最高級部位『ロース』の名は、英語のroast(焼く、炙るの意)から由来すると言われています。
牛肉の肩から腰にかけての背側の牛肉を焼いたり炙ったりに向いていることからroast=ロースと呼ばれるようになったようですね。
英語ではこの牛肉の部位をloin(ロイン=腰)と言います。牛肉のリブロースのほか、Sirloin = サーロインやTenderloin = テンダーロインがこれに当たります。
今では、飲食店では非常にポピュラーなこの2つのロイン(牛肉)についてのエピソードを少しご紹介しましょう。
サー(Sir)の称号が与えられた牛肉の部位
まずサーロイン(Sirloin)ですが、牛肉にナイトの称号である『サー』が冠せられているのだから、ただ事ではありません。
17世紀前半の英国、ジェームズ一世治下のころ、国王主催のパーティーで、賓客に供された牛肉のステーキが大好評を博しました。気をよくした当時の国王は、この牛肉に『汝にサーの称号を与える』と宣言して、満座の大喝采を浴びたそうです。
フランスの貴族から名付けられた牛肉の部位
次にTenderloin。国内の飲食店では牛肉のヒレ、ヘレ、またはフィレと呼ばれています。
とにかく動かすことのない牛肉だからtender = やわらかい、とあるように、牛肉ではもっともやわらかい部位の一つであり、通常飲食店では高級な部位の一つに挙げられます。
18~19世紀のヨーロッパでかなり有名な外交官であり、ロマン派に多大な影響を与えたといわれるフランス貴族のシャトーブリアン。
牛肉のヒレの中でも特にやわらかい芯部分の牛肉を好んで食した彼の名にちなんでこの牛肉の部位がシャトーブリアンと呼ばれるようになったようです。
牛肉(和牛)の格付けのお話
飲食店でこれを理解して提供出来ればお客様との会話のネタになるかもしれません。実は簡単なようで以外と複雑な牛肉の格付けに関するお話です。
飲食店で使用される牛の枝肉(正肉)は『牛枝肉取引規格』に基づいて、歩留等級と肉質等級の分離評価で格付けされます。
評価の公益性を保つために、公益社団法人日本食肉格付協会が様々な基準をもとに和牛のランク付けをします。
設立経緯|公益社団法人日本食肉格付協会
日本における食肉規格格付事業は、昭和36年代に公布された畜産物の価格安定等に関する法律の施行と共に実施され、その後、全国的な展開をみてきました。
当時は社団法人日本食肉協議会がこの事業を実施しておりましたが、食肉需給規模が年々拡大し、流通形態も大量かつ広域的な流通へと進展し、経済性の高い肉畜生産及び流通の指標としての規格格付の重要性と、より一層の公共性が要求されるようになりました…
牛肉の歩留は、切開面(第六~七肋骨間)のロース芯の面積、バラの厚さなど4項目の数値を規定の計算式に当てはめて算出されます。
この値が標準よりよければA、標準ならB、標準より劣ればCと、3等級に区分されます。
牛肉の肉質等級は下記の4項目にてランク付けされます。
- 項目①:脂肪交雑
- 項目②:肉の色沢
- 項目③:肉の締まり及びキメ
- 項目④:脂肪の色沢と質
※いずれも第六~七肋骨間の切開面で総合評価されます。
項目①:脂肪交雑
脂肪交雑=BMS(ビーフ・マーブリング・スタンダード)の12の基準で判定されます。
飲食店に食事に行かれることが多い方は頻繁に耳にするかもしれませんが、通常飲食店では5等級(A5)が最も稀少価値が高いとされています。
等級 | B.M.S.Na | 脂肪交雑評価基準 | |
5 | かなり多いもの | 8~12 | 2+以上 |
4 | やや多いもの | 5~7 | 1+~2 |
3 | 標準のもの | 3~4 | 1-~1 |
2 | やや少ないもの | 2 | 0+ |
1 | ほとんどないもの | 1 | 0 |
項目②:肉の色沢
肉の色沢=BCS(ビーフ・カラー・スタンダード)の7段階の基準で肉色が判定されます。7段階は5等級に区分されており、牛肉の光沢を肉眼で判定し、5等級に区分します。飲食店でこの牛肉の基準を耳にすることはあまりありませんが、鮮紅色で判断されます。
等級 | 肉色(B.M.S.Na) | 光沢 | |
5 | かなり良いもの | 3~5 | かなり良いもの |
4 | やや良いもの | 2~6 | やや良いもの |
3 | 標準のもの | 1~6 | 標準のもの |
2 | 標準に準ずるもの | 1~7 | 標準に準ずるもの |
1 | 劣るもの | 等級5~2以外のもの |
項目③:肉の締まりおよびキメ
牛肉の肉の締まりおよびキメについては、肉眼にて判定されます。
肉の締まりは、筋肉中のたん白質が含んでいる結合水が避離して、筋肉切断間に浸出する浸出液の多少、切開面 の陥没の程度に重点をおいて判定されます。
筋肉中の水分が脂肪に置き換えられた脂肪交雑程度の高い肉は、保水性が高く 、締まりも良いと判断され、一般的には若齢で筋肉中の水分の多いものは締まりが劣ります。
そして、牛肉のキメは、筋肉を形成する一次筋束の太さといわれており、この太さが細かいか、粗いかで判定します。牛肉の筋束が細かく、 結合組織によって緻密に結合しているものは、筋肉切断面もなめらかです。
等級 | 締まり | きめ |
5 | かなり良いもの | かなり細かいもの |
4 | やや良いもの | やや細かいもの |
3 | 標準のもの | 標準のもの |
2 | 標準に準ずるもの | 標準に準ずるもの |
1 | 劣るもの | 粗いもの |
項目④:脂肪の色沢と質
牛肉の脂肪の色沢と質=色沢は7段階の基準があるBFS(ビーフ・ファット・スタンダード)で判定します。
これに肉眼による光沢と質の判定を加味して5~1等級を決定します。こちらも飲食店では馴染みが無いと思いますが、牛肉の脂の色の白いものが価値が高いと判断されます。
等級 | 脂肪色(B.F.S.Na) | 光沢と質 | |
5 | かなり良いもの | 1~4 | かなり良いもの |
4 | やや良いもの | 1~5 | やや良いもの |
3 | 標準のもの | 1~6 | 標準のもの |
2 | 標準に準ずるもの | 1~7 | 標準に準ずるもの |
1 | 劣るもの | 等級5~2以外のもの |
歩留等級と肉質等級を連記するため、等級はA5からC1まで15段階で表示されます。
まとめ~飲食店のための牛肉(和牛)に関する基礎知識~
恐らくA5、A4など、普段お店を経営されていると、そこに意識がいきがちだと思いますが、少しだけ深い知識を持つと、お客様との会話にも広がりが持てると思います。
ぜひ飲食店来られるお客様へこういった知識をご共有いただき、さらに和牛のファンになっていただければ幸いです。
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