飲食店の原価率ですが、一般的には売上全体の約30%を占めるコストの一つです。
例えば、1000万円の売上規模の飲食店で、この原価率が1%高くなると、10万円を失う計算です。このパーセントでみれば「たったの1%でしょう」となるかもしれませんが額でみれば10万円。かなりの金額を失う事をご理解頂けると思います。
そこで今回は、この原価率の上昇要因や如何に低減していくのかを簡単に解説していきたいと思います。
飲食店の原価率はさらに高くなる可能性がある
2022年の年初より燃料高の影響を受け、電気、ガスなどの光熱費が約10から20%上昇し、また円安の影響で材料高が継続しています。さらに今年に入り、燃料費が高騰すれば、仕入れももう一段高くなる可能性は十分に考えられます。
もちろん仕入れコストの値上げ分をメニュー単価へ反映できれば良いのですが、値上げをすれば集客力の低下を招く可能性が高いため、それに踏み切れずにいる経営者の方は多いはずです。
また消費者心理についての調査でも、働き盛りの世代で6割以上の方が経済的な不安を感じています。つまり「不安=買い控え」となり、飲食店への来店頻度の低下を招く要因となっているのです。
前述の通り、単純な値上げや材料の盛り付けを少なくすれば客数が減少し、さらに厳しい経営になる事は間違いありません。その不安から値上げをせずに赤字経営を継続されている飲食店も多く存在します。
飲食店の原価率とは何を指すのか
飲食店の原価率とは何を指すのだろうか?
まず基本中の基本ですが、飲食業における原価率を知る前にFLRについて解説します。FLRとは、材料費、人件費、賃料を指します。
- 材料費 = Food
- 人件費 = Labor
- 賃料 = Rent
上記の英語名の頭文字を取りFLRと呼びます。
ちなみに、このFLRの合計が売上に対して70%以上になると利益を出しづらくなります。
またFLRの内、売上に最も影響を与えるコストが材料費です。そして材料費を売上で割り込み100を掛けたものを原価率と呼びます。
原価率 材料費 売上 x 100
この原価率を下げつつも売上を最大化していく事が飲食店の健全化には欠かせません。
飲食店の原価率の影響を見る
それでは飲食店の原価率が商売に与える影響について少し見ていきたいと思います。
簡単な事例を下記へ掲載しておりますのでご覧ください。
月間の売上200万円規模の飲食店の場合
原価率30% → 材料費60万円
売上総利益 140万円
原価率35% → 材料費70万円
売上総利益 130万円( 10万円)
200万円の売上に対して5%変わると±10万円となり、飲食店の利益に大きな影響を与える事をご理解頂けたと思います。
飲食店の原価率を低減できない理由
こちらでは原価率の上昇に悩まれている経営者の方に向け、まずは影響を与えている要因について9つご紹介したいと思います。
原価率の高騰に影響を与えている要因
まずは材料費の高騰を招く主な要因を9つ、下記へ記載しておりますのでご確認ください。
- ①販促、割引やクーポンでの集客に頼っている
- ②割安だからと大量の食材を一括で発注している
- ③ランチメニューの売上比率が高い
- ④食材の入荷時に検品をしていない
- ⑤数ヶ月前に仕入れた食材が冷凍庫の奥に眠っている
- ⑥冷蔵庫、冷凍庫内の整理整頓が出来ていない
- ⑦食材を使い切らずに捨てている
- ⑧計画的ではなく気分で常連さんへサービスしている
- ⑨毎月の棚卸をしていない
①販促、割引やクーポンでの集客に頼っている
お店や業態に魅力が無い場合、集客を広告や割引に頼る事になります。これだと有料ネット媒体への掲載費用もさることながら、広告の見栄えや常に材料費を掛けて魅力的なメニュー内容を考案せざるを得ないためコスト高を招きます。
②割安だからと大量の食材を一括で発注している
取引先によっては、週間の配送日を限定されます。また物流コストを抑えるために仕入量に応じた価格を設定されている問屋もあります。もちろん商売ですので当然の事ですが、これに合わせて一度の仕入量を増やすと食材ロスや鮮度の劣化を招く可能性が高くなります。
③ランチメニューの売上比率が高い
まずランチメニューの売上比率が高くなるとディナータイムの集客力が弱くなりますので安易なランチメニューの導入はお勧めしません。ちなみにランチタイムではなくランチメニューを提供している場合の話しですのでお間違いなく。特に近隣に勤務されている方はランチメニューに満足してしまうとディナーからは足が遠のきますのでご注意ください。
また集客力を高めるためにランチメニューはディナーメニューよりも材料費が高くなる傾向にあります。
こちらでは、ランチメニューの原価率50%、ディナータイムの原価率30%のお店でランチメニューの売上比率が50%のお店と、ディナータイムのみ営業しているお店の材料費を以下にて比較してみたいと思います。
ディナー営業のみ
売上200万円
ディナータイム原価率30%
材料費合計60万円(原価率30%)
売上総利益 140万円
ランチメニュー + ディナー営業
売上200万円
(売上比率 ランチメニュー50%の場合)
ランチメニュー原価率50% → 材料費50万円
ディナータイム原価率30% → 材料費30万円
材料費合計80万円(原価率40%)
売上総利益 120万円
200万円の売上に対して原価率が10%上がれば利益額は 20万円となります。もちろんディナータイムの集客が難しいためランチ営業に頼らざるを得ないお店もあると思います。
しかしながら、ランチタイムに十分な売上を確保できなければ、コンセプトや売り方の見直しをしない限り経営改善は出来ない事を覚えておいてください。
④食材の入荷時に検品をしていない
実は意外とここを疎かにしているお店が多いのですが、当然のことながら取引先も万能ではありません。納品したものと請求書に誤差がある事もあります。金額が安い場合は良いかもしれませんが、仕入れよりも高く請求された場合は、予定よりも原価率が高くなりますので注意が必要です。
⑤数ヶ月前に仕入れた食材が冷凍庫の奥に眠っている
在庫の回転率が低ければ、鮮度の低い商品を通常よりも低価格にて提供しなければならず原価率の上昇に繋がります。
⑥冷蔵庫、冷凍庫内の整理整頓が出来ていない
冷蔵庫、冷凍庫内の整理整頓が出来ていない場合、どこに何があるのかを正しく把握できません。そのため注文がダブり余計な在庫が増える可能性もあります。
結局、知らぬ間に庫内の奥の方で食材が腐り廃棄せざるを得なくなれば材料費は高騰します。
⑦食材を使い切らずに捨てている
魚介類、精肉、野菜などをカットした端材をそのまま廃棄しているため、歩留まりが悪く原価率が高騰してしまいます。
⑧計画的ではなく気分で常連さんへサービスをしている
計画的なイベントや販売促進ではなく、オーナーや従業員の気分次第で常連のお客様へメニューを無料でサービスしてしまう。
⑨棚卸をしていない
実は以外と多いのが棚卸をしていないケースです。棚卸をしないと正確な在庫状況を掴めません。また食材の回転率も可視化できないため食材の鮮度の低下と廃棄を繰り返します。
飲食店の原価率を下げるポイント7点
こちらでは飲食店の原価率を低減するポイントについて要点を7つに絞り解説していきたいと思います。
- ①目玉商品と冷し玉商品の開発
- ②低原価メニューの開発
- ③メニュー価格の値上げ
- ④メニュー数を絞り在庫の回転率を向上
- ⑤冷蔵庫・冷凍庫内の定位置管理と整理整頓
- ⑥仕入先の見直し・変更
- ⑦仕入先への価格交渉
①目玉商品と冷し玉商品の開発
目玉商品とは、お店のウリとなる集客商品のことです。お客様がこの目玉商品を求めて来店されるようになると日々の客数は安定してきます。しかしながら、目玉商品ばかり注文されると原価率は必然的に上がります。そのため低原価メニューである冷し玉商品を同時に投入し、メニュー全体で原価率を低減させるよう戦略を練ることが大切です。
②低原価メニューの開発
前述した通り低原価メニューの開発はとても大切です。まず低原価メニューの開発のポイントは端材の上手な活用も検討していく事です。例えば、おでんをお店で仕込む業態であれば大根の皮を厚めにピールし、それを浅漬けなどの一品料理にします。元々は廃棄し売上0円だったものを商品化し290~390円で販売すれば廃棄は減り原価率も低く抑える事が可能となります。
③メニュー価格の値上げ
メニュー価格の値上げは、当然必須の戦術です。仕入れが20%~40%以上高騰している現状でメニュー戦略のみで原価率を低減するのはかなり困難です。この場合、最低限の値上げは避けられません。但し、単純な値上げでは著しい集客力の低下を招き、お店の収益性はさらに悪化します。
値上げを成功させるポイントは、お店のブランド力を高めることです。つまり値上げに納得してもらえるよう商品の見せ方や食材のこだわりを上手に打ち出すことです。
これが出来ると売上をV字回復させる事と原価率の低減の両面で収益性を高められます。実際に昨年3月よりサポートさせて頂いている支援先では、月間売上350万円から1250万円(支援前比357%)となり、営業利益も月間▲300万円の状況から+320万円となり大幅な収益改善を実現しました。
昨年の3月よりサポートさせて頂いている支援先にて1月も過去最高を更新。月間300万円の赤字から営業日数の少ない一月でも10%弱の黒字が見えるところまで回復しています。今期は新店とセントラルキッチンの開業を目指します。https://t.co/312GZ2YkKe
— 宮城 崇@飲食店健全化サポート (@InshokukenZen) February 1, 2023
④メニュー数を絞り在庫の回転率を向上
当然のことながら、メニュー数が多ければ、それに比例して仕入れや在庫管理は煩雑になります。少量多品種を仕入れるため、コストメリットは低くなり、仕入れ価格も高くなります。そこで、メニューの出数に合わせてお客様に求められているメニューとお客様に求められていないメニューに分類します。お客様に求められていないメニューを削除し、全体的なメニュー数を絞る事で在庫の回転率が上がり、在庫管理が容易になれば無駄な発注もなく廃棄ロスの低減に繋がります。
⑤冷蔵庫・冷凍庫内の定位置管理と整理整頓
冷蔵庫・冷凍庫に食材がパンパンに詰まっている飲食店を目にする事があります。庫内がパンパン=食材の在庫を把握出来ていない状態です。正確な在庫数を把握出来なければ無駄な発注も増えますし、必然的に廃棄ロスや食材の鮮度も低下します。
まずは定位置管理と整理整頓で在庫管理を容易にし無駄な仕入れや廃棄ロスの削減に努めましょう。
⑥仕入先の見直し・変更
ネットで検索すれば、かなり多くの仕入先を探すことが可能です。まずは仕入れされている商品の一覧表を作成し、そちらを各仕入先へ提供し適正価格を把握しましょう。その上で先方へ希望価格を投げ、安価に提供してくださる取引先を選定されると良いでしょう。
⑦仕入先への価格交渉
正直、これは最終手段のためギリギリまで手札として使わない事をお勧めします。取引先は、根拠があり値決めをしています。また値上げの要請をして来られた場合も同様です。そのため、別の仕入先もなく、どうしても付き合う必要がある場合に限り価格交渉をされる事をお勧めします。
まとめ
~飲食店の原価率を低減するポイント7点【材料費の高騰に備える】~
飲食店の原価率に関して簡単に解説して参りましたが如何でしたでしょうか。今年は仕入れ価格や光熱費の高騰が待った無しの状態です。そのため早い段階で原価率の低減を計画しなければならないと感じています。
当然、弊社にてお付き合いさせて頂いている各支援先においては、昨年から値上げに取り組み大きな成果を出せています。詳しくは別の機会にメルマガ会員向けにお届けしようと思いますのでご興味があれば、ぜひ会員登録をしてくださればと思います。
今回は以上となります。最後までお読みくださり、ありがとうございました。
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