飲食店の歩留まりを簡単解説【食材ロスを削減し収益性UP】

飲食店経営の中で原価率を正しくコントロールしていくことは商売を成功させる上で重要なポイントの一つです。

その中で、飲食店の原価率にからむ要素に歩留まりという考え方があります。

耳慣れないコトバだと思いますが、この歩留まりは製造業や飲食業では日常的に耳にしている言葉です。

この歩留まりの理解度を高めるとロスの低減に繋がり、収益性を高めることが出来るようになり、飲食店の収益性を向上させることができます。

今回は、飲食店における歩留まりについて簡単に解説していきたいと思います。

飲食店の歩留まりとは

こちらの正式な読み方は、歩留まり(ぶどまり)です。

歩留まりとは、使用した材料や素材の分量に対して、完成した製品の出来高のことを指します。

その出来高の割合を歩留まり率と言います。

製品を製造していく際に、一定の割合でロスが発生します。
例えば、不良品の廃棄ロス、発注ミス、製造ミスなどがそれに当たります。

当然のことながら、製造サイドとしては、これらのロスを抑え、一つの製品のコストを最低限に抑え、より多くの完成品を製造出来るよう努力します。

この場合、製造サイドは、歩留まりを高める努力をしていると言います。

飲食店経営の歩留まりの高低について

前述の通り、飲食店経営において歩留まりは高い方が良いです。

社団法人 日本食肉格付協会が公表している資料の赤枠内の表ー1には歩留(歩留まり)等級区分が明記されいます。

この歩留まり率が高いほど枝肉の評価が上がります。

出所:公益社団法人 日本食肉格付協会:牛枝肉取引規格

飲食店での仕込みを例にとると、キャベツの芯まで100%食材を使い切ることが出来れば、歩留まりは100となります。

但し、現実的には飲食店で使用している食材の歩留まり100%で使い切ることはほぼ不可能です。

但し、仕込み方次第では歩留まりを100にしていくことが可能な食材もあります。

飲食店における歩留まりの事例:キャベツの千切り

実際にキャベツの千切りの歩留まりの平均値を求めるとカット後は、約93%となりました。

さらにカット後、食感をシャキシャキに保つため、30分間水にさらす工程を加えます。

歩留まり計算:キャベツの千切り

仕込み前:キャベツ 1,000g
製造工程 分量 歩留まり率
カット後 934g 93.44%
水にさらす 1,022g 102.22%

結果、上記の表のとおり、水にさらし、水切りをした場合でも、分量が元の重さ以上の1,022gとなります。

この場合、キャベツの歩留まり率は102.22%となります。

残念ながら、全ての食材で歩留まり100を達成できません。

例えば、魚1匹を仕入れた場合、刺し身用に仕込むと歩留まりは5割ほどです。

もちろん、粗などを味噌汁にすれば歩留まりは上がります。

和牛の場合ですと、イチボ一本の脂やスジなどをトリミングしていくと歩留まりは7から8割ほどになります。

このように食材に応じて歩留まりを把握しておくことで、飲食店の仕入れ時の交渉やレシピ作成に役立てることが出来るのです。

飲食店で歩留まりを高める方法

仕入れ量の適正化を図り、食材ロスを無くすことは飲食店の歩留まりを高める一番の近道です。

そして、食材の正しい扱い方を学び、無駄なく使い切る方法を研究していくことで飲食店の歩留まりを高めることが出来ます。

飲食店の仕入れ量の適正化による食材ロスの削減で歩留まりUP

飲食店で良くあるロスとその改善方法について簡単にご紹介します。これが歩留まりUPに役立ちます。

  • 歩留まりUP①:仕込んだものが、腐ってしまい廃棄ロスになる
  • 歩留まりUP②:仕込んだものが腐りそうなので冷凍している
  • 歩留まりUP③:ディナー用の食材を仕込み過ぎたためランチで販売している

歩留まりUP①:仕込んだものが、腐ってしまい廃棄ロスになる

飲食店では、発注予測と仕込み予測を正確にしていくことが大切です。

飲食店の日々、週間、月間の客数予測をもとに日々の商品の出数を予測し、適正な量の仕込みをします。

飲食店の都合で、まとめて仕込んだ方が楽だから、または人員が多いため今日まとめて仕込みをしようなどとせず、売れる分だけ仕入れて仕込むことをお勧めします。

それが出来れば飲食店では常に鮮度の高い商品をお客様に提供できるため顧客満足度の向上による客数アップも見込めます。

歩留まりUP②:飲食店で仕込んだものが腐りそうなので冷凍している

冷凍すれば使用できるから大丈夫ではないのかと思われるかもしれません。

もちろん、冷凍を前提に仕込んでいたものであれば問題はありません。

しかしながら、『客数予測を誤り飲食店で多く仕込み過ぎたため廃棄ロスになりそう』、だから冷凍しているのであれば品質の低下したものを後日お客様へ提供していることになります。

この品質の低下した商品を食べた方を顧客から失う可能性がありますので、食材のロスではなくお客様のロスに繋がり飲食店全体の歩留まりが悪化します。

歩留まりUP③:ディナー用の食材を仕込み過ぎたためランチで販売している

ディナーで販売すれば、1,500円で提供できる食材もランチでは800円での販売が限界かもしれません。つまり歩留まりが悪化しています。

そしてこの場合飲食店側は、約47%の原材料費をロスしていることになるのです。

飲食店は食材の正しい扱い方を常に学び続けること

先ほどの和牛の例をとっても、畜産場にてトリミングを経験された方とそうでない方の歩留まり率は大きく変わります。

野菜などは、端材を集めて少しだけ手間を加えたゆず風味の浅漬けなどにすれば、お通しやランチの付け合わせに出来ます。

このように食材の知識を積み上げながら、より良い状態で商品を提供していくためにどうすれば良いかを日々研究すれば必然的に食材の歩留まりを高めることが出来るのです。

まとめ
~飲食店の歩留まりを簡単解説【経営改善の第1歩は学びと実践にあり】~

今回は飲食店の歩留まりについて解説しました。

歩留まり率を知ることで正しく原価率を捉えることが出来るようになります。それをレシピに落とし込み、商品の出数と照らし合わせることで、正確な理論原価の把握も出来るようになります。

まずは歩留まりの大まかな考え方をご理解いただければと思います。

次回以降は、さらに原価率やレシピ作成にこの歩留まりをどう生かすかを具体的にお伝えしていきたいと思います。
 

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