コンサルティングのご依頼を受ける際に、約5割のクライアント先の飲食店でレシピを作成されていません。
レシピが無くても特に大きな問題は無いように思われるかもしれません。しかしながら、レシピを導入していない飲食店の損益計算書を見ると、毎月の原材料費は増減し、全く安定していない状況がほとんどです。
それでは当月の利益予測も立てられず、まさに成り行き任せの経営となり、計画的な借入や出店は出来ません。
今回は飲食店のレシピついて以下の3点に焦点を絞り詳しく解説していきます。
飲食店のレシピ作成について解説
- その①:売上に対して原材料費の割合を指す【原価率】正しい捉え方
- その②:レシピ作成時のポイントや注意すべきこと3点
- その③:飲食店のレシピ作成時の4つの手順
その①:飲食店のレシピ作成で重要な【原価率】正しい捉え方
飲食店の原材料費とは、金額を指し、原価率とは売上に対しての割合を指す言葉です。
仮に月間の売上が100万円で原材料費が30万円の場合、原価率は30%となります。
原価率の計算式
原材料費 30万円 ÷ 売上 100万円(税抜) = 30%
飲食店の原材料費と仕入高の違い
ちなみに飲食店用のレシピを作る上で一点覚えておくべきこと、それは原材料費と仕入高は異なるということ。
原材料費とはメニューを作るのに使用した費用ことで、仕入高とは材料を仕入れた費用を指します。
飲食店のレシピ作成時に用いる費用は、前者の原材料費になります。
実際の飲食店のレシピを使用し原材料費を確認
原材料費は、料理を作るのに使用した費用のことと申し上げましたが、具体的には以下のような計算になります。
レシピ内の原材料費とは:(例)俵型ハンバーグ
材料名 | グラム数 | 原材料費 |
俵型ハンバーグ仕込み | 200g | 248.66円 |
フライドポテト | 50g | 28円 |
ライス | 250g | 43.75円 |
味噌汁 | 180ml | 38.17円 |
食塩 | 0.2g | 0.02円 |
黒コショウ | 0.2g | 1.1円 |
大根おろし | 15g | 3.35円 |
ポン酢 | 10ml | 10円 |
薄力粉 | 5g | 1.65円 |
合計 | 374.2円 |
計算式は、 レシピ内の原材料費:(例)俵型ハンバーグの通りになります。
ですが、このレシピに違和感を持たれる方がいるかもしれません。例えば、飲食店の仕込みで食塩の0.02円は現金として計上は出来ませんが明記の必要があるのか?と。
飲食店のレシピで、食塩0.2gなんて軽量も出来ないよ、と思われるでしょう(笑)仰る通りですね。
しかしながら、1日100食、月間で3000食の出数があるとすればどうでしょうか。
100食/日 x 374.2円 = 37,420円(食塩代 2円)
3000食/月 x 374.2円 = 1,122,609円(食塩代 60円)
この場合、食塩だけを見れば、1日2円、30日間で60円を材料費として使用していることを想定できますので、レシピに金額とグラム数は明記すべきです。
飲食店では歩留まりを加味したレシピにしていること
飲食店の歩留まりとは、使用した材料や素材の分量に対して、完成した製品の出来高のことを指します。
その出来高の割合を歩留まり率と言います。
例えば、飲食店で1パック500gの小麦粉を購入した場合、ロスなく使い切ることはかなり難しいはずです。使い切れない理由は以下のようなケースです。
誤ってこぼす
パックの底に少し残った状態で捨てる
天ぷらの衣用に仕込んだが使い切れなかった
誤ってこぼすことはロスとも言えますが、ここでは一定の割合でこぼすことを想定して歩留まりとしました。例えば500gのうち平均値で約30gは使えない可能性があるとすれば、歩留まり率は94%と算出されます。
これを飲食店の材料費に置き換えて計算してみましょう。
歩留まり率を加味した材料費の計算式
小麦粉 500g 150円/P 歩留まり率 94%
仕入高 150円/P ÷ 歩留まり率 94% = 材料費159.6円
本来、小麦粉の仕入高は1パック150円ですが、94%の歩留まり率になることを想定していれば、材料費は1パックあたり159.6円になります。それをレシピに盛り込むのです。
レシピと歩留まりをより深く理解できる記事はこちら
今回は歩留まりについて分かり易く解説をします。飲食店経営の中で原価率を正しくコントロールしていくことは商売を成功させるための近道です。その中で歩留まりという考え方があります。この歩留まりの理解度を高めると…
飲食店のレシピ作成の目的は2点
飲食店経営においてレシピ作成をすべき理由は大まかに分けて2点あります。
目的①:飲食店の材料費の正しい把握のため
目的②:飲食店の従業員へ掛ける教育期間の短縮のため
目的①:飲食店の材料費の正しい把握のため
レシピ作成の目的の一つ目が、飲食店の材料費を正しく把握していくことにあります。
こちらの数字を把握せずに飲食店を経営をした場合、仕入高が想定よりも高くなり、翌月の支払に苦慮します。
適正に利益を残す商売をしたいのであれば、原価率の上限を35%以内に抑えるべきです。それ以上になると通常の飲食店の場合、赤字になる可能性が高いのです。そこで、レシピを作成し、原材料費を事前に把握できる仕組みが必要なのです。
目的②:飲食店の従業員に掛ける教育期間の短縮のため
そしてレシピ作成の目的2点目が、飲食店の従業員教育に掛ける時間を出来るだけ短縮していくためです。
昔の飲食店の料理人は『目で見て覚えろ!』と言われていました。
しかしながら、今の飲食店でそれは非効率です。理由は、急速に少子高齢化が進み、労働人口は減少していくためなのが一点。さらに、従業員を採用してもすぐに辞めてしまうリスクもあるため。
せっかく飲食店で教育に時間を掛けても、またゼロから採用と再教育をしなければならないのであれば、教育に掛ける時間を極力短くしたいはずです。
だからこそ、このレシピ作成は現在の飲食店経営には不可欠だと考えます。
その②:レシピを作成時のポイントや注意すべきこと4点
1点目.レシピには正確なグラム数と金額を記載
レシピ通りに商品を作成したのに、味が薄いなどの問題が起きないようにレシピ内の使用量の記載には十分に注意をしましょう。
さらに原材料費は売価設定において基準となる数値です。仮にレシピの金額を誤って記載してしまうと、利益にも大きく影響してしまいます。一人で計算をせずダブルチェックを心がけましょう。
2点目.レシピには食材の歩留まり率を加味
先にもレシピの作成にまつわる歩留まりの説明で軽く触れておりますが、ここの精度が高ければ高いほど、想定原価率と実際の原価率の差異が少なくなります。
3点目.レシピの売価設定を税抜にした上で原価率を算出
レシピ上の売価を税込みにしてしまうと、8から10%の消費税分が想定している利益よりも少なくなります。
そのミスだけで、飲食店の原価率は2.4%から3.0%分上昇し、お店の収益性を著しく低下させる要因になりますのでご注意ください。
4点目.素人でも商品を作れるようにレシピを設計
初めて飲食店へ入店した従業員でもメニューが作れるようにレシピを設計しましょう。もちろん熟練者よりも作業時間は長くなると思います。
ですが、入店一日目のアルバイトでもレシピがあれば、メニューを再現できるように設計されていることが飲食店経営には非常に重要です。
レシピ作成のポイントは、写真やイラストなどを活用し、視覚で感覚的に理解が出来るようにしていくことです。
その③:飲食店のレシピ作成時の4つの手順
こちらでは飲食店のレシピ作成の手順を4つに分けて解説していきます。
手順①:提供用と仕込み用のレシピを作ります
提供用レシピとは、完成品をつくるためのものです。
仕込み用レシピとは仕込み品をつくるためのものです。
このレシピには、作成日や改定日、商品名、販売価格、原材料費、原価率を明記します。
手順②:レシピには作業手順を詳しく明記します
最低でも完成品のイメージ画像だけはレシピには掲載しましょう。
またレシピに各作業手順ごとに写真やイラストがあると作業をイメージし易くなり、より記憶しやすくなります。
手順③:材料名、分量、金額をレシピに詳しく記載します
ここでレシピ記載の分量や金額を間違えると翌月の支払いに影響しますので十分にご注意ください。
ちなみにコード8011 俵型ハンバーグ仕込み_4とありますが、これは仕込み用レシピから数値を算出したものです。
手順④:レシピには歩留まり率の記入もお忘れなく
レシピに歩留まり率を90%と記載していますが、100円で購入したものが111円の原材料費になるということです。当然のことながら、これが100万円であれば111万円の原材料費になるわけです。
仮に歩留まり率を加味せずにレシピを作成した場合は、売れば売れただけ利益率が低下していくことになります。
まとめ
~【事例あり】飲食店レシピの作成目的とその方法を5ステップでご紹介~
レシピの作成は、今後の飲食店経営において必須であると考えます。
理由は、労働人口が減少しつづけ、従業員の採用が難しくなるからです。
仮に新人教育に時間が掛かれば、店舗運営に掛かる負担は必然的に大きくなります。
仮に、分かり易いレシピを作成しておければ、教育期間の短縮が可能となり、急な退職によるリスクを最小限に抑えることが出来るようになります。
もちろん、ある程度レシピの手順を覚えた熟練者であれば、単純に食材の分量のみが記載された分量表でも問題はありません。ですが、どなたにでも習得までに費やした期間はあるはずです。
そのため継続的に飲食店を経営していくことを考えれば、レシピの存在は自ずと重要なものとして位置づけられるのではないでしょうか。
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