飲食店が営業自粛時に取り組むべき事

いよいよ緊急事態宣言が発令され、2021年1月8日から2月7日の間は時間短縮による営業自粛をしていくよう飲食店を中心とした事業者へ政府から要請がありました。

今回の営業自粛に伴う時短営業に従う事業者に対しては、店舗ごとに一日6万円が協力金として支給されるため、固定費で186万円以下の店舗であれば休業しても店舗を維持できます。

しかしながら、今後長い目で見たときに飲食店の完全な休業は得策だとは言えません。

今回は、新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)および飲食店オーナーが今取り組むべきことなどを解説していきたいと思います。

そもそも営業時間の短縮(営業自粛)に強制力はあるのか

新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)ですが、基本的に営業自粛の要請に罰則を伴う強制力はありません

特措法の第2節まん延の防止に関する措置の第45条第1項では『~必要な協力を要請することができる。』と言及されています。

但し、第45条第3項では、特定都道府県知事は指示に従わない施設に対して要請に係る措置を講ずるべきことを指示できるため、営業自粛の要請に応じない施設を公表すること自体、法律上問題ありません。

新型インフルエンザ等対策特別措置法

第二節 まん延の防止に関する措置
(感染を防止するための協力要請等)
第四十五条 特定都道府県知事は、新型インフルエンザ等緊急事態において、新型インフルエンザ等のまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため必要があると認めるときは、当該特定都道府県の住民に対し、新型インフルエンザ等の潜伏期間及び治癒までの期間並びに発生の状況を考慮して当該特定都道府県知事が定める期間及び区域において、生活の維持に必要な場合を除きみだりに当該者の居宅又はこれに相当する場所から外出しないことその他の新型インフルエンザ等の感染の防止に必要な協力を要請することができる。

3 施設管理者等が正当な理由がないのに前項の規定による要請に応じないときは、特定都道府県知事は、新型インフルエンザ等のまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため特に必要があると認めるときに限り、当該施設管理者等に対し、当該要請に係る措置を講ずべきことを指示することができる。

出所:e-gov 法令検索 新型インフルエンザ等対策特別措置法

仮に通常営業をしたいと考える飲食店は、営業自粛の要請に従わずに深夜帯でも店舗の営業は可能です。

但し、営業自粛をせずに通常の営業時間で店舗を運営していくのであれば、今回の協力金は受領できない可能性が高いのでご注意ください。

営業自粛に伴う飲食店への協力金は一日6万円で十分なのか

今回の営業自粛に伴う協力金ですが、この31日間のみで考えれば中小規模の飲食店であれば完全に休業をしても協力金でお釣りがきます。

仮に月給450千円の従業員が4名在籍し賃料が1,760千円の店舗が31日間を臨時休業したとします。

営業自粛に伴う協力金と固定費上限

営業自粛の協力金上限 1,860,000円(60,000円x31日間)


  • 給 与 0円雇用調整助成金制度を適用
                     ( 助成前 450,000円x4名 = 1,800,000円)
    ※従業員の解雇等をせずに雇用を維持した場合は100%支給
  • 賃 料 1,760,000円
  • その他 100,000円

上記の通り、営業自粛に伴う協力金1,860千円を固定費の上限と考えれば、ある程度の規模の飲食店を存続させることが可能となります。

飲食店は営業自粛時に完全休業すべきなのか

飲食店への自粛要請に対して、完全休業にすべきかの判断は事業規模や店舗数に応じて検討すべきかと考えます。

当然ですが今回の新型コロナウイルスの場合、飲食店のみならず、問屋、八百屋や酒屋など、原材料を供給してくれている彼らもまたこの環境下でかなり苦しい経営を強いられています。

そのため、1店舗を経営されている事業者であれば、営業自粛期間中でも、仕入れ先の支援も踏まえ20時までは営業されることをお勧めします。

そして、2店舗以上を運営されているチェーン店であれば、仕入れは半減以下になると思いますが、5割の店舗は時短営業をし、もう5割の店舗は事業継続のために休業を選択することも検討されるべきかと考えます。

営業自粛に応じる飲食店が期間中に実施すべきこと

政府からの要請に応じて営業自粛に伴う19時までのアルコール提供と20時閉店の順守を前提とし、目的別に以下の2点を追加で実施します。

営業自粛①:地域一番店を目指しお客様との関係を再構築

『ピンチをチャンスに変えよう』と言うのは簡単ですが、具体的な目的をどこに置くべきでしょうか。

その目的が『周辺地域のお客様との関係の再構築』です。

つまり地域一番店になるための準備を粛々と進め、お客様との距離を縮めながらファンを増やす努力をしていきます。

例えば、以下の実施がその一例です。

店頭にてマルシェを実施し賑やかな雰囲気を演出

物販にご来店されたお客様との会話の機会や接点を増やす

開店時間を早め、満足度の高いテイクアウトメニューを充実

鮮度を考慮しご注文ごとにスピーディーに商品を提供できるよう仕組化、但し冷めても問題無い商品は店頭へ陳列

店頭の賑わい作りと不便なくお待ち頂けるようなレイアウトを検討

店頭にウェイティング席を作り、ストーブを設置、さらに温かいお茶やスープを無料で配布

店頭POPやポスター、または黒板にて、テイクアウトメニューを画像付きで掲出

店頭にて食材へのこだわりや製法などをお客様へ伝える方法を考える

通常の環境に戻った際にもリピーターに繋がるよう、営業自粛中にお客様との関係性を再度構築していくことが目的です。

営業自粛②:飲食店の売上と粗利確保のためにデリバリーを導入

昨年の3月以降の営業自粛時にスタートしたデリバリーの導入が上手くいかないと頻繁に耳にしました。

よくよく確認をしてみると、イートイン、テイクアウト、デリバリーが全く別の商売であり、ノウハウが全く異なることを理解されていない経営者の方からの意見が大半でした。

デリバリーにて売上を確保していくために必要なことを具体的に解説していきます。

:別の屋号(ブランド)にて営業


デリバリーを実施していく場合、デリバリー専用の別屋号(ブランド)を設け、高単価商品で一軒当たりの売上が高くなるようにメニューを構成します。

まず別屋号(ブランド)にて営業をしていく理由は、業態の特性に関係なく、地域に求められる柔軟な商品開発が可能となるためです。

そして、仮にデリバリー業態で問題が発生したとしても、実店舗の評判を下げずに済むこともメリットの一つです。

:原材料費40%以上掛け価値ある商品を提供


最低でも原価率40%以上(配送手数料別)をかけます。ここで原材料費を掛ける理由は、他店舗よりも価値ある商品に仕上げ顧客を囲い込むためです。

広告をUBEREATSや出前館などの外部サイトに依存している場合、高い広告費をかける大手チェーン店が上位表示される仕組みのため、注文獲得が難しい傾向にあります。

そのため価値ある商品を提供し、お客様から高い評価を得て、上位表示させる必要があります。

併せて、リピーターの確保に努めなければ継続的な売上確保ができないため、原価率を掛け粗利を高める戦略を取るのです。

:経時劣化を考慮した商品開発


商品を製造してからお客様の手元に届くまで、30から45分掛かることを前提に商品開発をします。

デリバリーだから質はそこそこで良いと考えれて商品開発をいているようであればリピートには繋がりませんし、別屋号で営業をしていなければ実店舗の評判がドンドン低下します。

当然のことながら、提供時間が長く、店内よりも高い価格の商品購入をしている側からすれば、店内よりも美味しいものを期待します。

それが、自分が抱いている期待値から大きく外れた商品を提供されれば憤慨してしまうのも当然です。

そのため、商品開発をしていく場合、経時劣化を考えながら試食を繰り返し、より良い商品を開発しなければなりません。

例えば、牛肉の場合、タンパク質が固まりはじめるのが58~60℃で、68℃以上になると分水作用が始まりお肉から水分が抜けていきます。
この効果を逆に利用し、低温調理した牛もも肉で、【特盛ローストビーフ丼】を商品化できれば、手間を掛けずに美味しい商品を作ることができます。

そして、炒め物であれば、油分が劣化を促すため、フライパンをテフロンなどの素材に変え、極力油を使用せずに炒め物が出来ないかを試験していくことも大切な考え方の一つです。

この経時劣化を考慮した上で、満足度の高い商品を開発していきます。

:ポスティングの実施による新規顧客の獲得


さらに導入当初はポスティングを実施し、周辺住民との接触機会を増やすことをお勧めします。

ある程度地域に浸透してくれば費用対効果が低くなるため、効果測定を計りながら、より効果的なポスティングのタイミングを探していきます。

そして、配達範囲は店舗を中心に2km(~最大3km)までです。

それ以上になると片道10分以内の配達が困難になるため、飲食店側は人件費が高くなり、お客様側は待機時間が長くなり、両者にとって不利益な状態となります。

これらを踏まえ、デリバリーを導入し、効果を最大化していきます。

まとめ
~飲食店が営業自粛時に取り組むべき事~

今回の営業自粛に伴う協力金の支給の裏側には、外食産業に従事される著名な方々が政府と対話を重ね、実現に至ったものだと認識しております。

まずはご尽力された皆様へ心から感謝申し上げます。

もちろん店舗規模により、今回の支給額のみでは店舗の維持が困難な事業者の方も多くいらっしゃるのも事実です。

そこは、生き残りをかけ、今今できることを粛々と実施しながら一円でも多くの現金を確保していくしかありません。

そして、環境が正常化された段階で、一気に集客力が高まるよう仕掛けていくべきだと考えます。

まだまだ厳しい環境が続きますが、ぜひ一店舗でも多くの飲食店が存続できるよう少しでもお役に立てる記事を発信していきます。

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