歩留まりの計算方法と材料費低減のアイデアをご紹介

今回のテーマはあまり聞きなれない歩留まりについてです。

 こちらの歩留まりに関しての記事は6分で読めます。

そもそも、歩留まり、または歩留まり率をご存知でしょうか。
YESと回答された方へ質問ですが、歩留まりがレシピや原価率に与える影響について詳しく解説できますか?
もしも上手く説明が出来なければ、ぜひこちらの記事を読んでみてください。

歩留まりとは

歩留まりとは、使用した材料や素材の分量に対して、実際に製品として使用できる完成品の量を指します。その出来高の割合を歩留まり率と言います。

こちらの画像はUS産の肩ロース800gをスキレットパンにてグリルステーキにしたものです。

冷蔵庫内で約10日間ゆっくりと干していくため、歩留まりが悪くなりますが水分が抜け、牛肉の旨味は凝縮されます。

少しトリミングが必要なため、歩留まりの割合(歩留まり率)は85%程度になります。

焼肉用では、さらに筋引きをし、牛脂なども削る必要があるため、さらに歩留まりは低下します。

焼肉用の仕込みで牛肉の歩留まり低下の理由を解説

注:スジや牛脂を他のメニューに流用しないことを前提に解説しています。

グリルステーキでは、A、B、Cと解体せずにそのままの状態で提供できるため歩留まりは乾燥させた分のみ低下します。

しかしながら、焼肉では、正肉を提供しているため、筋や脂を削る必要があります。そのため、A、B、Cと解体後に残る黄色の矢印にて示した白い箇所はロスとなるため、歩留まりは悪くなります。

MEMO

歩留まり =
仕入れた商材  - 製品化出来ないロス分

歩留まり率(歩留まりの割合)
= 製品化した歩留まり分 ÷  仕入れた商材 × 100

 

レシピ作成と歩留まりの関係性

レシピ作成に歩留まり計算は欠かせません。その方法を簡単に解説します。

ジャガイモの仕込みを例に歩留まり計算を解説します。

100円/kgのジャガイモを10kg購入し、メニュー用に仕込みをします。ここでは、芽を取り除き、皮をむくため10kgあったジャガイモは9kgになります。

歩留まり計算の考え方

カット前 ジャガイモ 10kg 1,000円 1kg単価 100円
カット後 ジャガイモ 9kg 1,000円 1kg単価 111

カット後のジャガイモの重量は9kgとなり、1kgのロスが発生しています。
つまり歩留まり率(歩留まりの割合)は90%となります。

歩留まり(歩留まり率)を元にした原価計算式

具体的に歩留まりを使用し、原価計算をします。

100円/kgで購入したジャガイモですが、レシピに落とし込む際は、歩留まりを加味します。そのため、レシピへは1kg当たり111円と記載します。

仕入価格 100円 ÷ 歩留まり率 90%
= 実際の原材料費 111円

なぜ歩留まりがこのような計算になるかというと、10%のロス分を仕入れ価格に上乗せしているからです。

この歩留まりを一つ一つの食材に対して細かく計算していくのは大変だと考える方もいると思います。

その際、仕込みに使用した材料の仕入価格とグラム数(個数)の合計だけでも把握しましょう。

この材料の総重量から何人前のボロネーゼソースが作れたのかだけでも把握していれば細かな歩留まり計算が無くとも原価計算の誤差を少なくできます。

 

スパゲティボロネーゼソース仕込み
材料名 仕入価格 グラム数(個数)
牛ひき肉
にんいく
玉ねぎ
ホールトマト缶
マッシュルーム缶(汁含む)
オリーブオイル
塩・胡椒
合計 1,000円 5人前

本来は、歩留まりが5人前のはずが、今回は4人前しか取れなかったとなれば、仕込みの問題や業者からの納品に誤りがあったと把握できます。

このエラーを見つけやすくしていくためにも、最低限の歩留まり計算をもとに、原価計算はしましょう。

歩留まり計算を忘れた場合のロス額

仮に歩留まり計算を忘れたとします。
月間の使用量が1000kgであれば、年間では12,000kgになりますね。

歩留まり分 11円/kg x 月間 1,000kg
= ▲11,111

歩留まり分 11円/kg x 年間 12,000kg
= ▲133,333

歩留まりの見落としが大きなロスに繋がります。

1店舗の個人店で歩留まりミスが発生しても、翌月から調整すればロスを挽回できます。

但し、5店舗のチェーン店舗を運営していたら歩留まり計算の誤差が大幅なロスに繋がり会社全体の粗利を圧迫します。

歩留まりを高め原価率を低減させる方法

ここまでくれば歩留まりに対しての理解度は深まっていると思います。

ここからはロスを削減し、歩留まりを高める方法を解説します。

OJTと仕込みレシピの活用で歩留まりのバラつきを無くす

ここでは、OJTと歩留まりを加味したレシピの必要性について少し解説をします。

 OJTとは

OJTとは、オン・ザ・ジョブ・トレーニング(On the Job Training)の略語で、実地訓練を意味します。この実地トレーニングは業務や作業を覚えてもらうために必須です。

 レシピの必要性と考え方を解説

レシピが必要な理由ですが、新人トレーニングを最短で終わらせ、一日でも早く一人前に育てるためです。

新人さんが入店した際に、教育研修をしながら、一人前に育てていく必要がありますが、急な退職もあると思います。そうなると、またゼロから教育をし直さなければなりません。

そのロスを最低限に抑えるために、歩留まりを加味したレシピの作成は必須だと考えます。

レシピは分量表ではなく、作業指示も兼ねたものが理想です。最終の盛り付けまで、視覚で分かるものがあれば、OJTにかける時間をかなり短縮できます。もちろん歩留まりを加味したものがベターです。

参考までにレシピ表を掲載しておきます。

 レシピ表の参考イメージ

 

納品時の検品と数量のチェックを必ず実施すること

こちらも歩留まりに関わる、納品時の検品作業について解説します。

商品の質や数量などに間違いが無いかをその場でドライバーさんとチェックしていくようにしましょう。ピッキングもドライバーさんがされているケースが多いため、通常であれば間違えないと思います。

但し、商品の質まで気を配れる方は少ないと思いますので、確認作業はしたいところです。歩留まりが悪くなれば原価率も高騰し、利益率の低下を招きます。

 歩留まりが悪化した例

仮にジャガイモ1kg当たりの歩留まりが10%悪化したとします。

仕入価格 100円 ÷ 歩留まり率 80
= 実際の原材料費 125

歩留まり 90%の場合 1kg 111円
歩留まり 80%の場合 1kg 125円

歩留まりの悪化で原材料費がアップ +14

【月間のロス額】
歩留まり低下分 +14円/kg x 月間 1,000kg
= 14,000

【年間のロス額】
歩留まり低下分 +14円/kg x 年間 12,000kg
= 168,000

歩留まりの悪化で、月間で14,000円のロス、年間では168,000円のロスとなり、そのまま利益を圧迫します。

さらに大型店舗になると、仕込みに追われて余裕がなく数量のチェックが後回しになりがちです。歩留まりの悪い商品が納品されても気づけません。少なくとも納品時の画像だけでも記録しておきましょう。
後でクレームをつけても、時間が経てばうやむやにされて終わりです。

個数が少なかったり、納品されていないもの、そして質が低く歩留まりの悪い商材でも支払をせざるを得なくなります。

ぜひ納品時の検品は怠らず、正規の金額で支払いが済むようにしましょう。

納品伝票と請求書の付け合わせを必ず実施

営業マンとの交渉で、仕入れ価格が低下したと喜ぶのはまだ気が早いかもしれません。

納品伝票よりも請求書の金額が高いことがあります。

例えば、経理と飲食店が分離している企業では、交渉した金額が反映されていないケースがあります。

また、請求書の仕入数が、納品書よりも多く記載されていることもあります。原因は赤伝といわれるマイナス伝票の打ち忘れが原因です。

悪質なケースは、個数やキログラム数を少し増やして、請求してくる悪徳業者もいます。

 問題発生の要因3点

①経理、購買、現場の物理的距離が遠いこと

②経理と現場の業務が連携していないこと

③購買担当と取引先の慣れ合いな関係によるもの

これらを解消していくためには各部門の連携が必須です。

予防策として最低限実施すべきことは、納品伝票を保管し、支払いの前に請求書との付け合わせ業務を実施していくことです。
それだけで問題の7割は解決します。

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まとめ~歩留まりの計算方法と材料費低減のアイデア~

飲食店において、歩留まりがいかに大切な考え方かをご理解いただけましたでしょうか。

食材によっても、歩留まりや歩留まり率は大きく異なります。

飲食店チェーンへと拡大をしていくタイミングでは、この歩留まりの知識をより深く理解しておくべきだと考えます。

そして、仕入価格を交渉される際は、この歩留まりを意識して値段の良し悪しを決めることを強くお勧めいたします。

とにかく食材に対しての歩留まりの良し悪しが、粗利を左右していく可能性が高いとだけでも覚えておいてくだされば幸いです。
 

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